SCSIハードディスクエミュレーター性能比較

最近は、SCSIハードディスクのエミューレーターが多数登場しています。共通する特徴としては、従来のハードディスクとは異なり、SDカードやCFカードなどの半導体メモリをディスクドライブとして運用ができる点です。

今回、限界性能を計測する目的としてUltra SCSI(20MB/s)の機材でGNOME Disksによるベンチマークと、レトロコンピュータでのアプリケーションベンチマークとしてPower Macintosh(5MB/s)でMacBenchでの性能評価を実施してみました。

測定対象および共通条件

今回のベンチマークは、変換番長(初代/PRO)、SCSI2SD(V5.1/V6)、RaSCSIの計5機種を対象としました。評価時点の各SCSIハードディスクエミュレーターの型番およびファームウェアは、以下の一覧となります。

Vender Product ファームウェア 備考
クラシックPC研究会 変換番長 販売終了品
クラシックPC研究会 変換番長PRO V.3.2.2.2
SCSI2SD V5.1 v4.8.3
SCSI2SD V6 (RevF) v6.2.9
GIMONS RaSCSI v1.44p1 (ベアべタル版) Raspberry Pi 3B + GIMONS純正コンバータ

備考として、SCSI2SD V6は、リリースノート的にはv6.2.7以降でしょうか、今回確認したv6.2.9においても大幅に性能が改善され、物理ハードディスクと遜色ない結果が得られました。購入時はV5と同程度のパフォーマンスでがっかりしたのですが、最近のファームウェア更新より劇的に改善され、今回のベンチマークの契機となりました。

測定ディスクイメージ (HFS)

今回の検証は、UbuntuとMacOS(Classic)で認識できるMacintoshのHFS形式でフォーマットしたディスクイメージを各SCSIエミューレータ毎に準備し、ベンチマークを実施しています。

参考測定機材 (HDD,MO,ZIP)

また、各SCSIハードディスクのエミューレーターの置き換えの対象となる、物理ハードディスクとして、以下のSCSIハードディスクやMO、ZIPドライブも比較対象として計測を実施しています。

  • IBM Deskstar DCAS-34330 (Ultra SCSI, 4.3GB, 5400rpm)
  • Quantum ProDrive LPS TB25S023 (SCSI-2, 250MB, 4500rpm)
  • Fujitsu MCD3130SS MO (SCSI-2, 4500rpm, 640MB)
  • Iomega ZIP Drive Z100SMAC (SCSI-2, 100MB)

GNOME Disks (3.28.3)

まず、基本的な性能を把握するために、GNOME Disksで計測しています。Disksは、LinuxのudisksのGUIフロントエンドとしてベンチマークのユーティリティが配布されており、ディスクの読み書きや、シークタイムの計測が可能です。

測定環境

  • NEC MY29RA-A (Core 2 Duo E7500/2.93GHz)
    • Adaptec AVA-2930LP (Ultra SCSI, 20MB/s)
    • Sync Transfer Rate : 20.0 MB/Sec
    • Enable Write Back Cache : N/C
  • Ubuntu 18.04
    • Udisks 2.7.6
    • gnome-disk-utility 3.28.3

測定条件

  • Format
    • HFS (Macintosh)
  • GNOME Disks Benchmark Settings
    • Transfer Rate
    • Number of Samples : 100
    • Sample Size (MiB) : 10
    • Access Time
    • Number of Samples : 1000

測定結果 – SCSI2SD V6が最速

今回評価したSCSIエミュレーターで、物理機のハードディスクと転送速度およびシークタイムで遜色のないのは、SCSI2SD V6と変換番長でしょうか。その他の、SCSI2SD V6、変換番長PRO、RaSCSIは、物理ハードディスクには性能的におよばず、MOやZIPドライブと同程度の性能となりました。

また、ファイルシステムにであるFAT32の構造上、変換番長PROおよびRaSCSIは対象のイメージサイズが大きくなると、ほぼリニアに性能が劣化する特性があります。今回は、64KBクラスタサイズのベンチマークでしたが、ファイルが増えるにつれFATが肥大していきますので、性能を重視するのであれば、可能な限り大きなクラスタサイズでのフォーマットが、その対策となります。

Vender Product Read Avg. (KB/秒) Write Avg. (KB/秒)  Seek Avg msec 機材構成
クラシックPC研究会 変換番長 2500 2100 2.20 SanDisk Ultra CF 4GB (25MB/s)
クラシックPC研究会 変換番長PRO 845.9 816.9 67.98 1GB (64KB) on SanDisk Ultra CF 16GB (50MB/s)
クラシックPC研究会 変換番長PRO 721.3 678.8 130.39 2GB (64KB) on SanDisk Ultra CF 16GB (50MB/s)
クラシックPC研究会 変換番長PRO 572.0 549.4 256.56 4GB (64KB) on SanDisk Ultra CF 16GB (50MB/s)
SCSI2SD V5.1 972.5 943.1 9.91 SanDisk Ultra Plus 16GB (80MB/s)
SCSI2SD V6 9100 3900 2.34 SanDisk Ultra Plus 16GB (80MB/s)
GIMONS RaSCSI 735.4 481.3 56.96 1GB (64KB) on SanDisk Ultra CF 32GB (50MB/s)
GIMONS RaSCSI 617.5 428.4 96.05 2GB (64KB) on SanDisk Ultra CF 32GB (50MB/s)
IBM Ultrastar 2ES 6900 5700 15.71 DCAS-34330 (Ultra SCSI, 4.3GB, 5400rpm)
Quantum ProDrive LPS 2600 2500 4.03 TB25S023 (SCSI-2, 250MB, 4500rpm)
Fujitsu MCD3130SS 3600 985.9 46.48 MO (SCSI-2, 4500rpm, 640MB)
Fujitsu MCD3130SS 3100 915.2 41.00 MO (SCSI-2, 4500rpm, 1.3GB)
Iomega Z100S 1000 860.8 46.36 ZIP (SCSI-2, 100MB)

MacBench 5.0

MacBenchは、すべてのMac OSシステム(AppleMacintoshおよびPowerMacintoshコンピューター、およびMac OS互換システム)のサブシステムレベルのベンチマークです。 MacBenchは、Mac OSシステムのプロセッサ、ディスク、グラフィックス、CD-ROM、およびビデオサブシステムのパフォーマンスを測定します。

測定条件

  • PowerMac 8100 + NewerTech MaxPower G3 PDS (257MHz)
    • Internal SCSI Bus (Custom IC, 5 MB/sec)
  • MacOS 8.1

測定結果 – 旧変換番長が最速

GNOME Disksの結果と同じく、物理機のハードディスクと転送速度およびシークタイムで遜色のないのは、SCSI2SD V6と変換番長になります。ただし、SCSI2SD V6については今回のような小規模の書き込みでの性能が極端に低い結果でした。今後のファームウェアでの改善に期待しましょう。

その他の、SCSI2SD V5、変換番長PRO、RaSCSIは、物理ハードディスクには性能的におよばず、同じくMOやZIPドライブと同程度の性能となりました。

ただし、GNOME Disksで見られた、変換番長PROおよびRaSCSIのディスクイメージサイズのよる速度劣化は、MacBenchでは有意な差はみられませんでした。GNOME Disksが10MBのイメージを対象にするのに対して、MacBenchでは1024K単位でのベンチマークですのでFAT32構造の影響は少なく、実際に使用するレトロコンピュータのファイルサイズを考慮すれば、こちらのベンチマーク結果の方が実環境の状況に近いと思われます。

Vender Product Seq Read 1024K (KB/秒) Random Read 1024K (KB/秒)  Seq Write 1024K (KB/秒)  Random Write 1024K (KB/秒)  備考
クラシックPC研究会 変換番長 4617.86 4684.72 4312.52 1804.58 SanDisk Ultra CF 4GB (25MB/s)
クラシックPC研究会 変換番長PRO 1044.30 1050.06 1008.25 1007.95 1GB (64KB) on SanDisk Ultra CF 16GB (50MB/s)
クラシックPC研究会 変換番長PRO 1043.99 1048.87 1006.35 1005.23 4GB (64KB) on SanDisk Ultra CF 16GB (50MB/s)
SCSI2SD V5.1 1079.17 1085.70 1202.50 1198.98 SanDisk Ultra Plus 16GB (80MB/s)
SCSI2SD V6 2266.58 2280.68 573.74 114.34 SanDisk Ultra Plus 16GB (80MB/s)
GIMONS RaSCSI 721.72 717.52 413.03 409.69 1GB on SanDisk Ultra CF 32GB (50MB/s)
GIMONS RaSCSI 717.72 712.74 415.65 407.28 4GB on SanDisk Ultra CF 32GB (50MB/s)
IBM Ultrastar 2ES 3770.12 3687.64 3754.74 3800.37 DCAS-34330 (Ultra SCSI, 4.3GB, 5400rpm)
Quantum ProDrive LPS 2498.87 2952.89 2866.54 2868.14 TB25S023 (SCSI-2, 250MB, 4500rpm)
Fujitsu MCD3130SS 1179.36 1117.43 657.30 656.99 MO (SCSI-2, 4500rpm, 640MB)
Fujitsu MCD3130SS 1180.84 1127.55 732.02 731.63 MO (SCSI-2, 4500rpm, 1.3GB)
Iomega Z100S 1164.03 1148.43 1164.13 1147.51 ZIP (SCSI-2, 100MB)

総評 – SCSI2SD V5 or 変換番長PROがお勧め?

今回計測した中で、当時の物理HDDと遜色のないSCSIエミューレーターは、旧変換番長とSCSI2SD V6の2機種になります。ただし、SCSI2SD V6は今回評価したファームウェアでは小規模ファイルの書き込み性能の劣化が見られたため、廉価かつ安定した性能を求めるのであれば、SCSI2SD V5の選択が無難でしょうか。

個人的には高速かつ安定的な旧変換番長の利用頻度が一番多いのですが、現状は新品を入手するのは難しいのが難点です。また、後述する運用上の利便性の観点からは、変換番長PRO/RaSCSIもお勧めですが、いずれもSCSI2SD V5より高価なのが難点です。

今回はベンチマークが主目的でしたが、最後に、今回紹介したSCSIエミューレーターの運用上の利点・欠点を整理して、今回のベンチマークの補足とします。合わせて、参考になれば幸いです。

複数コンピュータでの共有

1つのコンピュータで1台の固定的な運用ではいずれも問題はありませんが、複数のコンピューターで使いまわす場合には、SCSI2SDでの運用は簡便ではないかもしれません。SCSI2SDは物理ハードディスクのように専用ユーテリティ(scsi2sd-util)での区画設定が必要なるため、ディスクイメージをファイル単位で管理できる変換番長PROやRaSCSI、コンパクトフラッシュの交換で済む旧変換番長が、利便性では優れます。

バックアップ時の利便性

また、いずれのSCSIハードディスクもフラッシュメモリを利用している特性上、揮発する可能性があり、定期的なバックアップが必要となります。旧変換番長やSCSI2SDでは定期的にddrescue(dd)でダンプしてバックアップし、揮発に備える必要があるのが悩ましいところです。

その点、変換番長PROやRaSCSIは、WindowsやMacOXでファイルとして認識できるため、バックアップ観点での利便性も優れています。

OS規模による実用性

変換番長PRO、RaSCSIについては、対象ファイルサイズが小さいレトロコンピュータのOSでは問題がありませんが、Windows95やMacOSなどのある程度規模が大きいOSでは、性能劣化が発生する傾向があり、起動時間もかかるため実用には多少の難があります。