FM TOWNSのメモリは、72ピン、32ビット(パリティなし)のFPM(Fast Page Mode)のSIMM(Single Inline Memory Moudle)仕様に準拠しており、SIMMモジュールの1枚単位での増設が可能です。
ただし、当時のPC/AT互換機やMacintoshと72ピンSIMMとは形状的な互換性はあるものの、他機種用に一般的に流通しているSIMMモジュールは流用(認識)できない場合もあります。
これは、FM TOWNS用と一般に流通しているJEDEC仕様のSIMMモジュールとでは、容量やアクセス速度の認識に用いる信号(Presence Detect)ピンの仕様(用途)が異なるためです。
TOWNSのSIMM PD(Presence Detect)仕様
FM TOWNSのSIMMモジュールは、その容量の識別方法についてTOWNS独自の仕様があり、それが一般的(JEDEC)な仕様とは異なっています。同時期のNEC-9801のSIMMモジュール(PC-9801-61仕様)と同じく機種固有の仕様であり、これが一般的なSIMMモジュールがTOWNSで認識できない要因となります。
PD(Presence Detect)ピンの位置
PD(Presence Detect)信号線は、SIMMモジュールのにて67ピン〜70ピンの計4ピンに割り当てられており、一般的なJEDEC仕様ではその容量とアクセス速度を識別しますが、TOWNSでは容量のみを独自の仕様で識別しています。参考までに、以下が、当時TOWNS用の4MB拡張メモリとして販売されていたSIMMモジュールの写真です。
市販品のSIMMモジュールには、上の写真のようにPD(Presence Detect)信号線を右上の基盤パターン上で結線されているタイプの製品があります。TOWNSで、後に説明する流用に改修が必要な場合には、このようにPD信号線が基盤パターン上で結線され、回路が目視でも確認できるタイプがお薦めです。
JEDEC仕様との違い
TOWNSのPD仕様は容量のみの識別ですが、容量とアクセス速度を識別する一般的なJEDEC仕様を対比させると以下の表となります。
当時は、意識することなく、TOWNS 20FとMacintosh LC IIIでSIMMを使い回していました。時代的には30ピンのSIMMが廃れ、72ピンのSIMMが主流になった時期と重なります。今思えば、Macintoshと共用できていたのは、たまたま売れ筋の2MBのSIMMの使い回していたからでしょう。
1MB・2MB・16MB・32MBは流用可能
結果的には、一般的なJEDEC仕様で流用できる可能性のあるモジュールは、の1MB・2MB・16MB・32MBの4種類(1MB 80nS, 2MB 80nS, 16MB 60nS, 32MB 60nS)になります。
なお、1MB・2MBのSIMMについてはSIMMモジュールの30ピンから72ピンの移行期にあたるため、入手には72ピンである点を確認して下さい。
また、16MB・32MBについては、PC/AT互換機ではEDO-SIMMへの移行期にあたります。基本的にはTOWNSでも流用は可能ですが、製品によりFPM(Fast Page Mode)対応していない可能性もあるため、Macintoshiなどで実績のある通常のFPM-SIMMモジュールを選択するのが無難です。
ただし、TOWNSでは起動のメモリチェックに時間もかかり、大容量を必要とするアプリケーションがない場合は、大容量のSIMMモジュールは現実的にはオーバースペックかもしれません。
4MB・8MBは流用不可
その一方、4MB・8MBのSIMMモジュールは流用できません。TOWNSのSIMMスロット数は最大3スロット、ディスプレイ一体型のUX/UGなどでは1スロットしかありませんので、ある程度のメモリを増設したい場合には、4MB/8MBのSIMMモジュールによる増設が現実的です。
機種毎の対応アクセス速度
TOWNSでは、PDピンは容量の認識のみで、アクセス速度(tRAC)に関する割り当てはありません。ただし、TOWNSモデルの世代ごとに、対応しているSIMMの容量やアクセス速度に、以下のような制限があります。
なお、上記表では、7代目以降の機種(HA/HB/HCなど)については割愛しましたが、これらの機種はDIPスイッチの設定にて一般的なSIMMの利用も可能なよう考慮されています。
機種毎のメモリウェイト
また、縦型TOWNSでは3台目(10F/20F)まではメモリウェイトが設定されており、縦型の4台目(CF)や横型の5台目(HR)では高速(FAST)モードのでの設定が可能です。3台目(10F/20F)までについてもフリーソフトウェア(ab.comなど)でメモリウェイトは調整可能ですので、自己責任で試してみるのも良いでしょう。
TOWNSに最適なSIMMは?
結論としては、TOWNSモデルのSIMMモジュールを選択するには、全般的に「アクセス速度80nS以下」で各モデルに対応した容量のモジュールを選択する必要があります。
いずれにしろ、TOWNSに対応したSIMMモジュールを準備するには、以下の「TOWNS仕様準拠のSIMMモジュールを入手する」か「一般(JEDEC仕様準拠)SIMMモジュールを対応させる」か、いずれかの二者択一になります。
方法1:TOWNS仕様に準拠したSIMMモジュールを入手する (2MB, 16MB, 32MB)
2代目までや、6代目以降の機種では、一般的に流通しているJEDEC仕様からTOWNS仕様に準拠した2MB・16MB・32MBのSIMMモジュールを探してみるのも良いでしょう。とくに、TOWNS以外の機種(AT互換機やMacintosh)との共用を考えている場合には、使い回す際の混乱がなくなります。
ただし、初代と2代目TOWNSでは認識できる対応SIMMモジュールが最大2MBまで、3台目から縦型最終期となる4代目と横型初期の5代目までは最大8MBまでに制限されているため、16MB・32MBの大容量SIMMモジュールは利用できない点に注意してください。
なお、SIMMモジュールの30pinから72pinへの移行期以降は、容量は2MB以上、アクセス速度は80nS以下が主流でしたので、これらのモジュールは比較的入手は容易でしょう。
方法2:一般(JEDEC仕様準拠)SIMMモジュールを対応させる (4MB, 8MB他)
対応する最大メモリ容量が少ない初代・2代目TOWNSを除いては、4MB/8MBのSIMMモジュールによる拡張が効率的です。残念ながら、一般(JEDEC仕様準拠)SIMMモジュールではTOWNS仕様に準拠した製品はありません。
また、6代目のMX/MA以前の機種には認識できるSIMMモジュール容量が最大8MBまでの制限があり、5台目までは必然的に8MBが認識できる最大容量になります。
そのため、多くの機種では、既存の4MB/8MBのSIMMモジュールを改修して流用するのが効率的でしょう。まずはTOWNSで流用するSIMMモジュールの入手が必要となりますが、以下の写真のように、SIMMモジュール基盤右上にパターンがあり、PD信号線の結線状態が目視で確認できるのがお薦めです。
PD信号の修正については、単純にジャンパー線をとばしても良いのですが、既製品と同じように0Ωのジャンパーチップ抵抗を準備しても良いかもしれません。
以下の写真は、TOWNS仕様に準拠する形で、一般(JEDEC仕様準拠)SIMMモジュール(8MB,70nS)に0Ω抵抗器を取り付けた例になります。
写真上のSIMMが修正前の一般の8MBSIMM(70nS)モジュール、写真下のSIMMがTOWNSで8MBとして認識されるようにPD2(68)とPD4(70)の結線を追加したものです。
結線後は、目的とするPDピンとGND(一番右の72pinなど)との導通を確認し、あとは実際にTOWNSに装着してみて、正常にメモリカウントされ認識されれば流用成功になります。