Keychron Q1の導入とカスタマイズ

Keychron Q1の導入とカスタマイズ

Keychron Q1の導入とカスタマイズ

廃盤になったHHKB Lite2から、Keychron[1]やDrop[2]の65%キーボードに移行できたので、その延長線上でKeychronのQ1を選んでみました。Keychron K2に移行して感じていた課題[1]は、Windows環境ではDrop ALTの導入で解決[2]できたのですが、今回はMac環境の課題を解決するためのQ1の導入です。

Mac環境についてはWindow環境ほどカスタマイズは必要なく、ほぼKeychronK2/K3への移行に満足していました[1]。ただし、Windows環境のDrop ALTでのカスタマイズ[2]により、Fnキーの位置や、Fnキーを併用したWASDによるカーソルキーの配置など、Mac環境との操作性に差異が発生してきました。

K2でも非公式なQMK対応はあるものの[3]、Q1はKeychron公式にQMK/VIA対応した製品です。今回のQ1の導入により、Window環境との差分[2]に加えて、電源(Power)キーがない不便[1]も解消できました。

Q1のカスタマイズ

Q1については、現時点では通常版とノブ(Knob)版の2種類販売されており、今回購入した通常版については「キー打鍵時の金属音」や「キーキャップの互換性」が話題となっていました。現在では、Q1のノブ(Knob)版も登場しており、特にキーキャップの互換性は解消されていますが、自分も先人を参考に色々とカスタマイズを試してみました。

金属音対策

購入当初は、打鍵時の金属音は気にならなかったのですが、キーキャップを交換している中で、相性の問題もあるのか、甲高い金属音が鳴るようになりました。そのため、已むを得ず、静穏化のカスタマイズとなりました。

ケースの改善 - Force Break Mod (丸ラベル版)

まずは、多くのQ1ユーザーが実践している[3][4][5][6][7][8]、通称、Force Break Modeと呼ばれる打鍵時の金属音の抑制のために、上下の金属ケースの接触面にラベルを貼る手法です。今回は、テープではなく、エーワン(A-one)の丸型9mmのラベルでの代用を試してみました。

実践されているテープの厚みは0.1〜1.6mm程度で、重ねる枚数も人それぞれで異なります[3][4][5][6][7][8]。エーワン(A-one)の丸型ラベル1枚の厚みは0.1mmでしたが、組み立て後にケース上部を叩くと、明らかに1枚より2枚重ねの方が消音効果がありました。Force Break Modの効果は高く、ケース上部を叩いた時の金属音が、自転車で言えばアルミフレームが、カーボンフレームのような音に変わります。そのため、丸型ラベルは2枚重ね(0.2mm)としました。

スタビライザーの改善 - Tape Mod (丸ラベル版)

本来であれば、Force Break Modだけでも十分な効果があるはずですが、唯一、BSキーの打鍵時の金属音が消えませんでした。キーを外して試してみると、スイッチではなくスタビライザーとPCBの接触が発生源でした。こちらも通称、Band-aid Mod[9][10]の簡易版として、同じエーワン(A-one)の丸型9mmのラベルで代用してみました。

Band-aid Mod[9][10]のようなルブはなく、単純にスタビライザーとPCBの接触部に丸型ラベルを貼るだけの簡易版です。ただし、改善効果は非常に大きく、Force Break Modと合わせて、これで打鍵時に気になる金属音はなくなりました。ただ、Q1購入時に他社のスタビライザーに交換しているユーザーも散見される[17]ので、個体差かもしれません。気になるのであれば評判よ良い他社製のスタビライザーに交換しても良いかもしれません。

消音フォームの交換 - Sheet Mod (ゴムシート版)

今回購入したQ1は、金属音の消音を意識してか、出荷時に1mmと2mmの2枚の消音フォームが入っています。ただし、この出荷時の構成だと、せっかくのガスケットマウントの利点がなく、ほぼ動きがありません。既に打鍵時の金属音は消えていたものの、2mmの消音フォームを抜き、ガスケット動作を有効にしました。

2枚の消音フォームのみにすると、ガスケットマウントの効果で、打鍵時にかなり動くようになります。既にForce Break Modが効いており、2mmの消音フォームを抜いても金属音はありませんでしたが、残った1mmの消音フォームを、興味本位で同じ1mmの厚さのゴムシートに変えてみました。

こちらも多くのQ1ユーザーが実践している手法[5][12][18]ですが、車のデッドニング用の消音シートは、適量のみの入手できず、やや高価です。そこで、シリコンシートを利用している例[18]を参考に、価格も安く入手しやすいゴムシートを試してみました。近くのホームセンターでは、Q1のボトムケースのフォーム横幅の310mmに合う既製品がなかったので、同コーナーで写真にある製品(WAKI NBRゴムシート)の測り売り(50cm幅10cm単価:174円)で20cm(348円)購入し裁断しました。

ゴムシートへの交換の効果も大きく、シリコンシートの例と同じく[12]下部ケース単体で叩いてみると、出荷時のウレタンフォームとは歴然とした消音効果の違いがあります。ただし、単体で見れば交換する価値はあるものの、Force Break Modと併用しての効果は感じづらいので、Force Break Modで十分効果が出ていれば必要はないでしょう。

キーキャップの互換性

Q1では、他社キーキャップの互換性が報告[13][10][11][12]されており、端的に言えば標準的にOEMプロファイル以外のMT3プロファイル[13]などの大きめのキーキャップの利用には難がありそうです。以下の表が、Q1で試してみたキーキャップの仕様一覧となります。キーキャップのサイズについては実測値となります。

Maker Product 相性 Profile 奥行
Keychron Double Shot ABS Full Set Keycap Set OEM 17.6 17.6
Keychron OEM Profile PBT Retro Keycap Set OEM 17.6 17.6
Keychron Double Shot PBT OSA Full Set Keycap Set OSA 17.9 17.9
Drop Skylight Series Keycap Set OEM 17.6 17.6
Drop Artifact Bloom Series Keycap Set Cherry 17.6 17.6
Drop MATT3O MT3 /DEV/TTY KEYCAP SET MT3 18.2 18.2
Drop biip MT3 Extended 2048 Custom Keycap Set MT3 18.2 18.2

◎ : Keychron OEM Profile PBT Retro Keycap Set (OEM Profile, 17.6mm)

本来、キーキャップのサイズは対象キーボード専用に設計されてはいますが、多くのキーキャップはOEMプロファイルと互換性があります[14]。OEMプロファイルの基準となるCherryMXのキーキャップサイズは18.0mm[14]であり、多くのキーキャップが18.0mm以下となるように設計されている[15][16]のが標準的なようです。

Q1のセット購入時のABSキーキャップや、写真にあるKeychoronのPBTキーキャップなど、一般的なキーキャップは17.6mmのものが多いようです。また、Dropから販売されているCherryたOEMプロファイルのキーキャップも17.6mmであり、互換性を重視するキーキャップであれば、Q1での利用には問題はないでしょう。

◯ : Keychron Double Shot PBT OSA Full Set Keycap Set (OSA Profile, 17.9mm)

Keychoronから販売されているOSAプロファイルのキーセットで、同社のOEMプロファイルのキーセットよりやや大きい17.9mmです。わずかな差ですが、後述するMT3プロファイルのように引っかかることはないものの、PBT素材かつケースに接触しやすいのか、前述した金属音対策のModは必須となります。

OSAプロファイルということで、OEMプロファイルの高さでSAプロファイルの窪みがあるような形状です。購入前には中途半端な感じかなとも思っていましたが、SAプロファイルや後述するようなMT3プロファイルのような運指に影響がある[2]ような高さはなく、窪みに指を置きやすいので、かなり使い勝手が良い感じです。

△: Drop + biip MT3 Extended 2048 Custom Keycap Set (MT3 Profile, 18.2mm)

Q1を最近使っていなかったMT3プロファイルにして、高さのあるキーキャップに慣れてみる機会にしようというのが、当初の目論見でした。ただ、決定的に使えないとまでは言えない[13]までも、やはり下段隅のキーキャップが多少なりとも引っかかる場合があります[10][11][12]。Mac環境では、使用頻度も低いキー位置となるため実用的な問題はないものの、左隅のCTRLキーを多用するWindowsやLinux環境では、お勧めできない状況です。

MT3プロファイル自体も標準的なキーキャップの大きさの認識はある[19][20]ものの、実測値で18.0mmをオーバーしています。Q1のノブ(Knob)版ではトップケースの角度R形状が改善されており、おそらくMT3プロファイルでも問題はなさそうです。ただし、Q1の通常版の上部ケースの角Rが直線的になっている隙間が多いデザインは、汎用性とのトレードオフ的な感じです。

Q1の感想

Q1のカスタマイズやキーキャップの交換により、Q1の構成がほぼ固まってきたので、この段階での評価をまとめてみます。

安定感 - 最右列の押し間違いも解消

やはりQ1の筐体の重さからくる安定感はかなりのものがあり、プラスチック筐体のK2と比較すると打鍵時に安定感があります。感覚的には、打鍵時にキーボード自体が動くような感覚がなくなり、安定感があります。

また、Q1の最右列のキーは間を置いて配置されているため、Keychron K2[1]の課題であった最右列の押し間違いもなくなりました。K2での最右列の押し間違いは、HHKBでの癖が抜けきれないのか、最後まで治りませんでした。打ち間違えると、画面がホームやエンド位置まで飛んでしまい、一気に作業が中断していたストレスが、Q1で一気になくなりました。

剛性感 - ガスケットマウントは不要?

ただし、打鍵時の剛性感については、やや劣るような印象です。今回のQ1も、Keychron K2と同じGateronの青軸[1]ですが、タクタイルな軸はガスケットマウントとは相性が悪い感じがあります。現在は、出荷時の2枚構成のフォームを入れ、ガスケットマウントが、ほぼ動かないようにしています。

フォーム1枚構成にして、しばらく試してみたもののの、ガスケットマウントの動作があっても気にはならないのですが、正直、動かなくとも困らない感じがします。むしろ、打ち比べてみると青軸としての打鍵感としては、ガスケットマウントがないDrop ALT[2]の方が硬質で、なにより打鍵しやすい感じです。

赤軸などのリニアなメカニカルスイッチと相性が良いのは想像はつくのですが、今回の青軸や茶軸のようにタクタイル感のあるメカニカルスイッチとのガスケットマウントの相性は悪い感じで、必要がないかな?、というのが率直な感想です。

OSAプロファイルの使いごごち

また、打鍵時の安定感は、OSAプロファイルのキーキャップの効果も大きいです。最初は中途半端なプロファイルかなとも思ったのですが、窪みはOEMプロファイルよりあり、打鍵時やホームポジションの指の位置が固定しやすい感じがあります。

OEMプロファイルと同じ高さなので、MT3プロファイルのような運指に影響があるような高さもありません。使いやすいMT3プロファイル形状のキーキャップといった感じで、先日のDrop ALT[2]も、このキーキャップに交換しています。

最後に

Keychoron Q1は、QMK/VIA対応でキーマップの変更が容易です。Q1の導入で、Mac環境でHHKBからの移行時の不満[1]や、Drop ALTの導入で発生したWindows/Linux環境との差異[2]が、以下のように解決できました。

  • 電源(Power)キーの配置 (INSキーの位置)
  • CapsLockキーをCTRLキー(左)に割り当て
  • Fnキーをスペースバー右に配置 (⌘キーと交換)
  • Fn + カーソルキーの配置 (WASD配列)

カスタマイズについては、特にForce Break Modの効果が大きく、金属音が気になる場合には、是非試してもらいたい手法です。そのほかの手法については、金属音が消えない場合に、補助的に導入するのが良いと思います。

ただし、ガスケットマウントについては、今回の青軸メカニカルスイッチとの相性が良くなく、剛性感がやや落ちる感があります。個人的には、キーボードに剛性があるのが好みであることがわかりましたが、とは言え、打ち比べてみないと気にならない程度の違いですので、しばらくMac環境ではQ1をメインにしていこうと思っています。