11速時代のWレバー – SL-7700の修理を考える

11速時代のWレバー – SL-7700の修理を考える

11速時代のWレバー – SL-7700の修理を考える

フリクションの保持力がなくなった、シマノの9速のWレバーであるSL-7000を修理しよう、最近いろいろと調べていました。結果として構造的に分解は難しく、補修部品の入手も難しいようでしたが、今回は、Wレバーを取り巻く11速の状況をふくめて、修理までの顛末をまとめてみます。

SL-7700の補修部品は?

このWレバーSL-7700は、11速が主流の現在でも、いまだに生産が継続している数少ない9速のパーツではありますが、構造的には分解しての修理が難しく、ユニットごとの交換が必要となります[1]

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部品表の②SISユニット(6BG9801)が今回の対象ですが、部品図で確認してみても、ユニットごとの交換が基本で、分解は想定されていないようです。SL-7700については、小パーツの備品の取り置きはあったものの、SISユニットは定価で部品を取り寄せるより、新品を買ってしまった方が、安上がりな感じです。

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ただ、SL-7700の補修部品については、今となってはどこのネット通販でも注文できないようなので、ショップ経由の入手となりそうです。いずれにしても、SL-7700については新品への交換が現実的なようです。

11速時代のWレバー事情

修理ではなく新品を入手するにしても、シマノからはWレバーは10速のSL-7900を最後に、11速のラインナップにはWレバーそのものがリリースされていません。

シマノ公式には11速対応のWレバーは存在しませんが、ダイアコンペなどの他メーカー、バーエンドシフター系とあわせて、いったん現状の状況を整理してみます。

Wレバー

現状国内外で入手できるWレバーの仕様を以下にまとめてみました。傾向としては、シマノとサンレースがインデックス、ダイアコンペがフリクションの製品を主として販売している感じでしょうか。

No Component Product Index Friction 推定引き量(mm)
1 Shimano SL-R400 8 - 19.6 (= 2.8 x 7)
2 SL-7700 9 10 20.0 (= 2.5 x 8)
3 SL-7900 10 - 20.7 = (2.3 x 9)
4 DIA-COMPE ENE 11S SHIFTER - 11 27.0 = (2.7 x 10)
5 ENE CICLO W-SHIFT LEVER - 10 20.7 = (2.3 x 9)
6 W-SHIFT LEVER - 10 20.7 = (2.3 x 9)
7 SunRace SLR91 9 - 20.0 (= 2.5 x 8)
8 SLR80 8 - 19.6 (= 2.8 x 7)
9 SLR80 8 - 19.6 (= 2.8 x 7)

ありがたいことに、ダイアコンペからはシマノの11速ディレイラーに対応した「ENE 11S SHIFTER」がリリースされています。興味本位で取り寄せてはみたのですが、左右非対称とは知っていたものの、想像以上に左右レバーの大きさの違いがあり、ちょっと驚いてしまいました。

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左右非対称の理由は、シマノの11速のリアディレイーラまわりの仕様変更により、ケーブル巻量が35%(=27.0 / 20.0)ほど増えた[2]増やす必要があるためです。

結果的には、右側レバーだけがかなりの大きい製品となっていますが、SRAM(31.0mm = (3.1 x 10))、Dyna-Sys(36.0mm = (3.6 x 10))非対応との表記もあるので、シマノ(27.0mm = (2.7 x 10))やカンパ(26.0mm = (2.6 x 10))に対象を絞った設計で、これでも最低限の大きさに収めている苦労は感じられます。

バーエンドシフター系

シマノ、カンパニョーロともに11速対応のWレバーそのもの製品は販売していないものの、タイムトライアル向けなどに11対応のバーエンドシフターは準備されています。両製品ともインデックス対応のみのラインナップで、フリクションタイプでの利用はできません。

No Component Product Index Ratio 推定引き量(mm)
1 Shimano SL-BSR1 11 1.4 27.0 = (2.7 x 10)
2 Campagnolo TT 11 Speed Bar End Shifters 11 1.5 26.0 (= 2.6 x 10)

こちらもSISユニットの互換性を期待して、シマノのバーエンドシフター(SL-BSR1)を取り寄せてみましたが、11速対応のディレイラーに対応している割には、大きさ的には9速のSL-7700との違いはなく、右側のレバーサイズは一緒でした。

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SISユニットの互換性については、部品表での確認だけでは確信はもてなかったのですが[1][3]、現物を確認した限り、形状的に9速対応のSL-7700や10速対応のSL-7900と互換性はありそうで、大きな収穫となりました。

ただ「ENE 11S SHIFTER」とは違い左右のWレバーのサイズは一緒のため、Wレバーとして利用する場合には、SL-BSR1のレバーの可動範囲はより大きくなり、倒れこみの角度はより大きいはずです。ただし、元々はバーエンドシフターとしての利用が前提の製品であり、可動範囲については問題ないのかもしれません。

そのほか、コマンドシフターなど

Wレバーやバーエンドシフター系の以外の選択肢としては、コマンドシフター系などがあります。Wレバーとは異なる操作のものもあり、気軽に試すにはハードルが高そうですが、いったんまとめてみました。

No Component Product Index Friction 推定引き量(mm)
1 DIA-COMPE ENE Wing Shifter - 11 ?
2 Gevenalle CX 11 11 27.0 = (2.7 x 10)
3 AUDAX - 10 20.0 (= 2.5 x 8)
3 Shimano SL-A050 7 - ?

コマンドシフターの「ENE Wing Shifter」については、世代的にはなじみはなく高額なので、試しに購入できるものではなさそうです。シマノのSL-A050については、安価で入手しやすく、いろいろ改造して利用している方もいらっしゃいます[3][4]

GevenalleのCXについては、おそらく公式にシマノの11速ディレイラーに対応する、世界唯一のインデックス/フリクションレバーです。Gevenallについては、ブレーキレバーへの装着を想定した製品のため、Wレバー的な運用は想定されていないようで、形状的にもバーエンドシフター系です。もしかすると、シマノ製品を流用した製品かもしれませんが、ちょっとマイナー感もあり、今回は購入を見送りました。

どう修理する?

最終的には、SL-7700を修理するためSHIMANO SL-BSR1」を取り寄せて調べてみました[6]。結果として、SL-BSR1についてはSL-7700とも形状的にSISユニットの互換性があり、SL-BSR1の11速SISユニットがSL-7700のレバー部に換装することで修理できました。

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SL-7700にSL-BSR1のSISユニットを換装することにより、11速のWレバーを実現する方法については、こちら[6]にまとめていますので、参考にしてみてください。