SHIMANO SH-RC302レビュー – シンプルかつトレンドが詰め込まれたエントリーモデル

SHIMANO SH-RC302レビュー – シンプルかつトレンドが詰め込まれたエントリーモデル

SHIMANO SH-RC302レビュー – シンプルかつトレンドが詰め込まれたエントリーモデル

シマノのRC3は、2021年にラインナップされたシマノノレーシングロードシューズで、上位モデルから多くの機能を受け継ぎ、エントリーモデルの枠を超えた充実した機能を備えたロードバイクシューズのグレードです。今年、2代目モデルとしてSH-RC302にリニューアルされ、初代モデルのSH-RC300への改善点もあり、今回購入してみました。

今回のSH-RC302も、RC3グレードらしい価格帯を超える品質と機能性は維持されています。レースグレード向けの改良により価格向上はありつつも、全体的な剛性感やチープな部分は改善されており、コストパフォーマンスを重視するライダーには、間違いなくおすすめできる一足です。

SH-RC302の特徴と利点

SH-RC302は、SHIMANOのハイエンドモデル「S-PHYRE」シリーズで培われた技術を継承しつつ、現代的なトレンドを取り入れたコストパフォーマンスに優れた、高性能なロードシューズに仕上がっています。モデルナンバー的には、SH-RC301はスキップされたのでしょうか。初代モデルのSH-RC300との比較を交えて、特徴をまとめてみます。

BOAダイヤルの採用 - 素早い脱着と調整

SH-RC302も、低価格帯ながらBOAダイヤルを一つ搭載し、ベルクロとの併用もないシンプルな設計です。この価格帯では通常ベルクロや靴紐が一般的ですが、成熟が進み、ベルクロだけではなくルーティングの樹脂パーツがないのも、近年のロードシューズのトレンドではないでしょうか。

例えば、ロングライド中に足がむくんでも、BOAダイヤルを回すだけで簡単に緩められるのは大きなメリットです。また、従来のバックル式に比べてメカニカルなトラブルが少ないため、安心して使用できます。

BOAダイアル位置の変更 - 改良されたフィット感

初代モデルのSH-RC300では足首やヒール周りのフィット感に甘さもありましたが[1]、SH-RC302では、BOAダイアルの位置が一般的な高い位置に変更され、課題であったフィット感の甘さが改善され、足首からヒール周りまでのホールド感が向上しています。

初代モデルのSH-RC300では、低いBOAダイアルの位置は独自のデザイン性への寄与もありましたが、一般的な位置へ変更されました。ヒールカップの形状も変更され、SH-RC300ではが絞りこまれていた形状が、包み込むような形状に改良され、ヒールの安定性に寄与しています。

ベーシックなデザイン - シンプルでスタイリッシュ

RC3シリーズは、シンプルでありながらスタイリッシュなデザインが特徴です。SH-RC302では、、アッパー部とヒール部で異なる素材が異なる、RC上位モデルのデザインが取り入れられましたが、単色をベースにベーシックなブラックやホワイト、ネイビーなどのシンプルなカラーバリエーションがラインナップされています。

S-PHYREを筆頭とするシマノノレーシングロードシューズは、トレンドを先取りしている面もあるのか、奇抜なデザインが多く、好みが分かれるところではないでしょうか。シンプルなデザインを求める方にとってSH-RC300は魅力的な選択肢です。デザインは控えめですが、細部の仕上がりには妥協がありません。アッパーのステッチや素材の質感からは、シマノの製品へのこだわりを感じます。

ソール構造の改良 - 全体的な剛性は向上

数値的なソール剛性は6と、初代モデルのSH-RC300と同じとされていますが、ソール全体の剛性は明らかに向上しています。外面的なクリート部の剛性に変化はありませんが、手の力でも歪ませられた前モデルのソール全体の柔らかさが、改善されています。

SH-RC300と同じ素材感のコンポジットナイロンソールですが、ソール部は再設計されています。ハニカム構造部のパターンは変更され、肉抜き部の面積も小さく素材の充填率が大きくなり、ソール全体の剛性感に寄与しています。ベンチレーション部の小型化は、寒冷期など、通期の利用にはありがたい変更です。

再設計されたソールは、クリート部が簡易的な 防水シールは廃止され、ナイロンカバーの嵌め込みに変更されています。ナイロンカバーは、クリート部の剛性感だけではなく、雨天時や洗浄時などの耐久性も期待できそうです。

WIDEモデルの選択肢 - ロングライドや冬季でも快適

SH-RC302は通常モデルに加え、WIDEモデルも展開されています。幅広の足を持つライダーにとって、シマノのWIDEモデルの存在はありがたいラインナップです。シューズのフィット感は、快適なライドに直結します。特に、長時間のライドでは、適切な幅のシューズが足の疲労を軽減するため重要です。

個人的に、シューズを選択する最重要事項は、「足が痛くならない」快適性です。また冬場には、厚手のソックスを履くことも多いため、WIDEモデルの選択肢は、通勤など、通期で使用するライダーにとって非常に有用な選択となります。

SH-RC302の気になる点

SH-RC300は、エントリーモデルでありながら、初代モデルであるSH-RC300の課題を確実に改善し、上位モデルからより多くの機能を受け継いでいますが、気になる点もいくつかあります。

デザイン変更と価格上昇 - 実売価格で50%アップ

SH-RC302は、初代モデルであるSH-RC300と比較すると、上位モデルのデザインがより強く踏襲されたものの、定価は19,800円に引き上げられました。一方で、初代モデルであるSH-RC300で採用された、独自のBOAダイヤル配置やサンドラップ構造の個性が失われ、没個性的なデザインになったとも言えます。

実売価格が15,000円前後のSH-RC302は、初代モデルの実売価格が10,000円前後であったことを考えると、エントリーモデルというよりはミドルレンジの価格帯に位置づけられます。ソール剛性や品質の向上は評価できますが、価格上昇に伴い、初心者や予算に限りがあるライダーにとっては、やや手が出しにくいモデルになったと言えるでしょう。

剛性は控えめ - ダイレクト感には欠ける

ソール剛性は6(上位モデルのRC9は12、RC7は10)と控えめです。初代モデルであるSH-RC300と比較すると、土踏まずを中心に踏み込むと、ソール全体の剛性感は感じられますが、カーボンソールほどの足裏全体で踏みこめるほどまでの、剛性感はありません。

ソール全体のしなり感は改善されましたが、踏み込み時のカーボンソール特有のダイレクトな剛性感もありません。ただ、一昔前のナイロンソールのような柔かいロス感はなく、じっくり踏み込める、十分な剛性感は維持されています。いずれにしろ、高い剛性やダイレクト感を求める方には、上位モデルの選択をおすすめします。

最後に - 価格以上の価値を持つエントリーモデル

シマノのSH-RC302は、初心者から中級者までをターゲットにしたエントリーモデルとして、価格以上の価値を提供しています。BOAダイヤルやWIDEモデルの選択肢、シンプルなデザインなど、多くのライダーにとって魅力的な特徴が満載です。

初代モデル(SH-RC300)からの価格向上はありつつも、ソール全体の剛性感は向上し、クリートの目隠し部分のチープさが改善されていいます。剛性やフィット感について一部気になる点はあるものの、これらを補って余りある快適性と実用性を備えています。コストパフォーマンスを重視するライダーには、間違いなくおすすめできる一足です。