チェーン交換は、自転車ではタイヤと共に頻度の高いメンテナンスで、手軽なチューンナップ方法でもあります。本来は、摩耗したチェーンからの交換となり、剛性感が復活する楽しいメンテナンスです。レースなどの大事なイベント前に、交換する人も多いと思います。
しかしながら、11速にアップグレードしてから、9速時代に感じられた新品チェーンの初期剛性が感じられず、不思議に思ってました。端的に言えば、11速チェーンでは新品と使い古しのチェーンの剛性感の違いが体感できず、チェーン交換が楽しくありません。
ふと思いつき、出荷の新品チェーンを計測してみると、シマノの11速チェーンは、同社の9速チェーンと比較しても、出荷状態の遊びが大きい(0.18% → 0.25%)ことがわかりました。おそらく、これが11速チェーンの初期剛性の劣化原因と感じています。
計測結果
9速時代は、剛性感がリフレッシュされる手軽なチューンアップとして、レース前にチェーンを交換していました。ただ、11速チェーンは交換しても、リフレッシュ感がなく、剛性感の違いが感じられず不思議に思っていました。ただし、チェーンの素材や製法自体は進化しているはずですし、耐久性的についても、実測値的にも問題はなさそうです[1]。
しばらく不思議に思っていましたが、剛性感のなさは、製法や素材よりも摩耗原因である「ローラー内径が違うのでは?」と思い立ち、手持ちのチェーンを計測してみました。比較のため計測したチェーンは、シマノ2種類のグレード(CH-HG901/CH-HG901)の11速チェーンと、9速のシマノとカンパニョーロの最上位チェーンの2種類(DURA-ACE/RECORD)です。
メーカー | 型番 | 段数 | 出荷状態伸び(%) | ローラー外径(mm) | ピン直径(mm) |
---|---|---|---|---|---|
Shimano | CH-HG901-11 | 11 | 0.25 | 7.5 | 3.4 |
Shimano | CH-HG601-11 | 11 | 0.25 | 7.5 | 3.4 |
Shimano | CN-7701 | 9 | 0.18 | 7.5 | 3.4 |
Shimano | CN-HG53 | 9 | 0.18 | 7.5 | 3.4 |
Campagnolo | Record C9 | 9 | 0.00 | 7.5 | 3.4 |
当初計測を予定してた、肝心のローラーのブッシュ内径は、ローラーを挟んでいる内外プレートのため計測できませんでした。ただし、関連するローラー外径やピン直径は同じサイズでしたので、出荷状態伸び(%)の値は、各社のローラーのブッシュ内径に違いがあるためと推察されます。
Shimano CN-HG901-11 (0.25%)
計測してみると、驚いたことにシマノのチェーンは11速は出荷状態で0.25%と、出荷状態でかなりの遊びがありました。設計的な意図もありそうですが、11速のチェーンの初期剛性が体感できない原因は、この出荷状態の大きい遊びありそうです。後述する従来のチェーンと比較しても、遊びが大きいです。
試しに、現行11速チェーンのDURA-ACEグレードの「CH-HG901-11」と、普及グレードの「CH-HG601-11」を比較してみましたが、いずれの遊びも0.25%で違いはありませんでした。耐久性の違い[1]については、シマノ説明通りSIL-TEC[2]などの潤滑処理の効果と思われます。
Shimano CN-7701 (0.18%)
9速のチェーン交換では、摩耗したチェーンと新品のチェーンの剛性感は、はっきりと感じられました。DURA-ACEグレードのCN-7701を計測してみると、現行の11速チェーンより、やや少ない0.18%の遊びに留まっていました。
数値的には、現行の11速チェーンと比較すると0.7%(0.25% - 0.18%)と数値的には僅かな違いですが、体感的には剛性感として充分に感じられる違いです。
Campagnolo C9 (0.00%)
カンパニョーロのレコードチェーンは、9速時代から剛性感と耐久性が際立っている存在です。チェッカーによる計測では0%と、シマノ製品と比較すると、ほぼ遊びがない状態でした。
9速のRECORDチェーンは、DURA-ACEチェーンと比較しても明らかに剛性感が高く、金属ベルトを踏み込んでいるようなガチッとした剛性感です。カンパニョーロレコードのチェーンは11速になっても高耐久性を誇っているようです[1]。この高耐久性が9速同様にブッシュ部にも起因するのであれば、剛性も期待できそうです。
最後に
今回、新旧のチェーンを計測してみて、シマノの出荷状態のチェーンの遊びに違いがあることがわかりました。耐久性的には、現行チェーンでも問題にはなっておらず[1]、素材的な改良やSIL-TEC[2]などの潤滑処理により、耐久性について維持しているものと思われます。
カンパニョーロレコードのチェーンは11速になっても高耐久性を誇っおり[1]ので剛性も期待できそうです。ただし、チェーンとしては高額なのと、11速チェーンから接続に特別なカシメ処理が必要なため、ちょっと扱いずらい感じがあります。
11速にアップグレードして、シマノチェーンの出荷剛性が落ちてしまったのは残念ですが、やはりチェーンは消耗品です。新品チェーンへ交換する楽しみはないものの、当面はシマノチェーンをメインとして、カンパニョーロや他社のチェーンを試していきたいと思っています。