今回、Wahooからリニューアル[1]されたのを機会に、初めてSPEEDPLAYのペダルを購入してみました。購入から1ヶ月、富士ヒルクライム[2]などのレース参加と合わせて、屋外を中心にしばらく実走を続けてきました。
ペダリングシステムとしては特徴的な面もあり、実走を続けてみて一長一短のある感想となりましたが、やはり他社ペダルと比較して踏み込みトルクや足首角度が意識しやすく、自身のペダリングを見直す機会になったのは最大の収穫です。今回、SPEEDPLAYで得られたペダリングの感触は、他社ペダルにも応用できそうです。
付属品 - 各社シューズに対応
ペダル本体には、各社シューズや各シューズサイズに応じた取り付けが可能なように、複数のシムや取り付けネジが付属しています。別売りの他社ペダルと違い、シムや取り付けネジを取り付けながら最適なものを選べる構成です。
シムはシューズ底面の湾曲に合わせて2種類、取り付けネジはシューズの底面の厚みに応じて長短選べます。特に今回初めての購入となるだけに、別売りで購入を躊躇するよりは、初心者には有り難い付属品の配慮です。
設定: △ (調整幅が狭い?)
今回、41EUサイズのfi'zi:kのシューズ(R1B INFINITO BOA)に取り付けましたが、ベースプレートは最初についていた青色のシムで隙間なく取り付けられました。ただし、説明書に記載があるように、シューズ底面とベースプレートに隙間がある場合には、付属の別のシムとの交換になります。
気になった点としては、ベースプレートの調整幅が狭いかも?ということです。最初に、最近主流になりつつある母指球と小指球の中間ラインにペダル軸を合わせたのですが、以下の写真にある通り、後退幅にほとんど余裕がありません。
最終的には、踏み感の違いから最大限までベースプレートを後退させるのですが、なんとか調整できたものの、シューズとの相性や、極端に深い位置のクリート位置を好む人の場合には、調整が出せないかもしれません。
着脱: △ (踏み嵌め動作が必要で緩め)
最初はベースプレートの確認をかねて、室内でステップインしてみたのですが、全然嵌まりませんでした。「馴染みがでるまで嵌めにくい」噂は聞いていたので心配しましたが、外に出ていろいろ試してみたところ、案外早くにコツを掴むことができました。金属の馴染みが必要と言うよりも、独特の装着方法を意識して慣れていく感じです。
「ダンシングして、クランクを下死点で止め、ペダルを水平して踏み抜く」動作をすれば確率高く装着できます。いまのところ「サドルに座り漕ぎながら瞬間的に踏み込んでペダルを嵌める」動作は成功率が低く、どうしてもダンシングして踏み込んで装着する頻度が高いので、若干街乗りには不向きかなと思います。
両面ペダルとは言え、SPDのようにガチャ踏みして適当に嵌まることはないので、シィティングにしろダンシングにしろ、明確に嵌めるための踏み込み動作が必要です。他社のロードペダルのように、ダンシングの必要なく、クランクを回しながら軽い動作で装着できるほうが、片面で裏返るデメリットを考慮しても、街乗りではストレスがないかもしれません。
対して、ステップアウトについては簡単で、他社ペダルと比べると、かなり軽い感触です。その反面、フローティングはかなり軽く、フローティング角度は無段階で調整できるものの、フローティング角度を狭くすると簡単に外れてしまうので、固定的な感触が好みの方には、この緩さが気になるかもしれません。
踏み感: ◯ (縦方向に安定、横方向は不安定)
ペダルが小さいため、実走前はSPDペダル的な感触も想像していましたが、SPDのような点で踏むような感覚は全くなく、他社のペダルとは異なり、前後の広い面で踏んでる感触があり、独特の安定感があります。むしろ、往年のSPD-Rのような縦方向の安定感が感じられます。
ただ、仕様的にはスタックハイトは低いものの[3]、剛性感を踏まえてのダイレクト感は、シマノやLOOKのペダルより低めで、タイムのペダル的な感触でしょうか。もう少し剛性感があっても良い感じがもしますが、硬い感じはなく踏み込めるので剛性的には適切なのかもしれません。
縦方向: ◎ (安定)
結論的には、ペダル軸の縦方向に安定感があり、踏んでる感覚が掴みやすいです。クリートの接触形状は、かつての楕円形状のSPD-Rより抑えめの円形状ですが、それでも他社ペダルと比較すると縦方向に長く、SPD-Rっぽい前後のシーソー感があります。
最初は、正確な角度で踏み込まないとシーソー感が出てしまい、その踏み込み角度の自由度の低さによる違和感が強かったのですが、慣れるにつれ、正確な角度で踏むことだけを意識すれば出力も自然と上がることに気がつき、踏んだ感じが掴みやすいのは強みです。プロによる旧SPEEDPLAYインプレでも足首角度への言及があり[5]、単純に他のペダルとは最適な足首角度が違うための違和感なのかもしれません。
ただ、登坂では踏み込み時の足首角度の制約が強く出る感があり、現在は他ペダルよりクリート位置を踵方向に深めにしてアンクリングを抑制して様子を見ています。ただ、前述のベースプレートの後退幅がもうないため、可能であれば、もう少し広い調整幅で試してみたいところです。
横方向: ◯ (最初は不安定感あり)
縦方向の暗転性の反面、横幅は他社ペダルと比較すると踏み幅も狭く、横方向の安定感は低めです。そのため、他社のペダルと同じ感覚でダンシングしたり、停車時に体重を乗せると立ちゴケしてしまいそうです。
ただし、横幅の狭さに起因して剛性感が弱いとか、SPDペダルのような点で踏んでいるような感触は全くないので、絶妙なサイズなのでしょう。最初は横方向の不安定さが気になっていたものの、乗り込むうちに全く気にならなくなりました。
装着感: △ (緩め)
他社ペダルと比較すると、フローティングはかなり緩く、ステップアウトは簡単なものの、ペダリング中もゆるゆるに動いてしまうので、好みが大きく分かれるところかもしれません。他社ペダルは、ペダルに対して垂直方向のバネで固定されますが、SPEEDPLAYは水平方向のリングで固定する方式なので、構造的に致し方ないところかもしれません。
また、フローティングの角度は調整可能なものの、固定的な意図で角度を狭くしてしまうと、走行中に簡単に外れてしまうため、実質的には固定的な意図での角度調整はできません。とは言え、あまりフローティング角度を大きくすると、フローティングの緩さから不用意に左右に動いてしますので、ある程度狭くしないと動きすぎてしまい不安定になります。
タイムペダルと違い構造的に自由に動くというよりも、構造的に垂直方向の固定圧力がなく自由に動くといった感じでしょうか。この緩さも、乗り込むうちに違和感は少なくなりますが、他社ペダルで固定クリートを利用していたり、実質的に左右の移動が必要ないペダリングの場合には、固定的な運用ができないSPEEDPLAYの構造は、大きく違和感を感じるところかもしれません。
最後に - 長所と短所
今回、Wahooからリニューアル[1]されたのを機会に、初めてSPEEDPLAYのペダルを購入してみました。SPEEDPLAYペダルは、今まではトライアスロン利用者が好むペダルの認識がありましたが、最近はプロチームやロードバイクでの利用者も多くなってきたため、試しに購入してみました。
富士ヒルクライム[2]などのレースと合わせて、しばらく実走してきましたが、一長一短はある感想です。長所は、やはり他社ペダルと比較して踏み込みトルクや足首角度が意識しやすいことです。短所としては、横方向の不安定さや、フローティングの緩さで、これに慣れることができるかで、大きく評価が分かれるところだと思います。
個人的には、SPEEDPLAYの長所である踏み込みトルクや足首角度に気がつくことができたので、他社のペダルを利用する際にも、このSPEEDPLAYで得られた感覚を大事にするように乗っています。
他社ペダルだと、多少足首の角度が悪くても踏めてしまっていたのですが、パワー伝達的にはロスに繋がっていたのでしょう。他社ペダルを含め、踏み込み時の伝達効率に気がつけたのが、今回のSPEEDPLAYペダル購入の一番の収穫となりました。