Wahoo KICKR Direct Connectの安定性と遅延について

Wahoo KICKR Direct Connectの安定性と遅延について

Wahoo KICKR Direct Connectの安定性と遅延について

Zwiftのv1.24[1][2]から、KICKRの有線ケーブル接続オプションであるDirect Connectがサポートされたので、早速試してみました。結論的には、Direct Connectによる走行にはやや違和感を感じることもありますが、通信の安定化は、不安定さがあるANT+無線通信と比較すると、非常に大きなメリットになりそうです。

ANT+接続の課題

今まで、KICKRとZwiftの接続は、WindowsPCとUSBのANT+スティックの無線で接続していました。最初は、PCに直刺しの状態(KICKRからの距離は160cm)運用では、明らかに1秒ほどパワーが0Wになる瞬断が発生するため、USB延長ケーブルを併用していました。

Zwiftのv1.24[1][2]から、KICKRの有線ケーブル接続オプションであるDirect Connectがサポートされたので、早速試してみました。KICKR Direct Connectの発表から約1年越しとなる、ようやくのZwiftでの対応です。結論的には、Direct Connectによる走行にはやや違和感を感じることもありますが、通信の安定化は、不安定さがあるANT+無線通信と比較すると、非常に大きなメリットになりそうです。

もちろん、数値通りに、当日の体調やペダリングのトルクが抜けている可能性はあるもの、ANT+無線通信への機材的な不信感は拭えていませんでした。

Zwiftとの接続

Direct Connectは、KICKR(2020)[6]と同時に購入したものの、Zwiftでの対応は今回のv1.24[1]登場まで、1年近く待つこととなりました。他社と比較して最後発の対応となったのは、後述するプロトコル的な課題もあり、チーター対策が課題とされたのかもしれません。元々、ZwiftのWindowsPCも有線で室内ネットワークに接続しており、今回は通信安定化の目的もあり、Direct Connecも有線ネットワークで接続しました。

Direct ConnectをZwiftで認識させるには、物理的な接続と合わせ、ネットワーク的な設定が必要です[2]。Windows版の場合には、v1.24[1]インストール後に、セキュリティ許可のアラートがポップアップされたので、許可する必要がありました。

また、KICKR関連のファームウェアも併せての更新をお勧めします。Zwiftのデバイスペアリング画面設定で、イサーネットコネクタのアイコンのKICKRが認識されれば、設定完了です。

今回は設定初めに、認識はされるものパワーデータが送信されない事象が発生しましたが、KICKRのファームウェアを最新(v4.2.8)に更新すると解消されました。ちなみに、Direct Connectは発売時(v1.0)からファームウェアの更新はありませんでした。

試走してみて - 安定性と更新周期

Zwiftでの認識に成功したので、早速試走してみました。しばらく乗っていると、踏み込んでいる出力が遅れている反映されている感覚があることに気がつきました。今までにない感覚で、パワーデータの反応がもっさりしている違和感があります。

ANT+接続のような、瞬断により淡々と踏んでいるのにパワーが反映されていない感覚とは違う違和感です。踏み続けていると、確かにパワーは正確に反映されるのですが、反映されるまで辛抱して踏み続ける必要があります。また、急激に踏み込んでみると、突発的なパワー変動が反映されていないANT+無線通信ロストに近しい、違和感も感じられました。

通信プロトコルの確認 - 遅延による違和感の原因

違和感が気になったので、Direct Connectのの通信状況を確認してみました。既に解析されている通り[3]、ダイレクトコネクトのデバイス発見は軽量なZeroconfプロトコルである、mDNS(マルチキャストDNS)ベースです。

プロトコル詳細までは解析されていない[3]ものの、実際の通信を確認してみると、確実性を重視した結果なのか、TCPベースで60バイトほどのパケットが送受信されています。ANT+のような垂れ流しで、軽量なUDPでの実装を想定していたため、ちょっと意外でした。

また、送受信データのプロトコル解析はできていないもの、パワーデータ送受信はDirect Connect側から0.5秒間隔(2Hz)の固定周期で送信されているようです[7]。Direct Connectの更新周期の改善については、Zwiftのサポートセンターにも連絡をとってみたのですが「現時点ではWahoo側の仕様」との回答でした[7]

ANT+の無線での更新間隔は有線より遅い1Hzとの回答[7]でしたが、ANT+に接続を切り替えてみると、明らかに有線より反応は良い感じがします。少なくとも無線では5Hz〜10Hzぐらいはあるでしょうか。いずれにしろ、今回Direct Connectで感じた「もっさり感」は、このパワーデータの更新周期に起因していそうです。

最後に - 安定性と違和感のトレードオフ

今回、Direct Connectの導入により、ANT+の無線環境で困っていたパワーロストの問題は解決できそうです。ただし、現状のDirect Connectの更新周期に起因する違和感は、ある程度慣れる必要がありそうです。ANT+仕様的には更新周期の上限は200Hz[4]とのことで、今回の違和感は、KICKRのANT+での更新周期を下回るために感じられたものと考えています。

とは言え、パワーロスの可能性による機材への不信感は、遅延による違和感を上回りますので、これからKICKRの接続はDirect Connectメインにしていこうと思います。特にトレーニングで目標とする数値が達成できない時に、体調的な問題なのか、機材的な不調なのかの切り分けができない課題は解決できるため、導入メリットは大きいと感じています。