Wahoo KICKR MOVE + KICKR CLIMBを試してみて

Wahoo KICKR MOVE + KICKR CLIMBを試してみて

Wahoo KICKR MOVE + KICKR CLIMBを試してみて

KICKR 2020の故障[1]により、Wahooサポート経由で日本代理店から新品購入の割引オファーがありました。KICKR MOVEは、ダンシングには不向きながらも、疲労軽減にもつながり自然なペダリングが可能となるスライド機構が導入されています。懸念としは、KICKR 2020[1]とCLIMB[2]の2回の故障を経験し、KICKR MOVEについても無償の保証期間が1年と短いことです。

購入前にWahooサポートに確認したところ、KICKR MOVEも故障箇所によっては有償の修理も期待できない[1]とのことでしたが、他社製品では手持ちのKICKR CLIMBは活用できす、再度Wahoo製品のMOVE購入に踏み切りました。

KICKR MOVEの特徴

KICKRについては、登場以来の基本性能およびデザインが踏襲されています。KIKCR MOVEについても、全体的なサイズ感や、メインコンポーネント部については従来デザインと共通です。

KICKR 2020(V5)とKICKR MOVEを比較してみても、メインコンポーネント部には、特徴的なWIFIのLEDランプが追加されている程度です。ただし、持ち運びのハンドル部が交換可能となり、より取り回しやすい位置に変更されています。

今回、KICKR MOVEに搭載されたスライド機構は、KICKRにおけるメジャーアップデートと言える刷新になりますが、いくつかマイナーな更新も合わせて、その特徴につきレビューしてみます。

◎ MOVE - 機械式スライド機構の導入

KICKR MOVEの最大の特徴は、本題部分が前後にスライドする機構が組み込まれたことでしょう。従来の左右5°の範囲内で傾く設計であるAXISフィートも標準装備されているため、固定式のトレーナーでありながら、前後左右の移動が実現されています。スライド機構は機械式で、前後に7cm、合計14cmの範囲で動作します。

スライド動作は、実走から想像される単純な前後へのスライドではなく、振り子のような動きをします。また意図した動きではなさそうですが、スライド機構部自体にも左右1°ほどの遊びがあるため、AXISフィートに加えて左右の揺れに対しての追従性が増しています。

スライド機構は、電子的な制御もなく、耐久面も期待できます。また、ロックアウト機構も備え付けられており、バイクを装着時やトレーナーの移動時はもちろん、スライド機構をオフにし従来のKICKRのような固定ローラとして利用する機構としても活用できる点も、保険的な意味で有難い機能です。

○ 乗降時の振り子感

スライド機構を有効にしている場合、KICKR MOVEの乗り降りは、少なからず振り子感があります。固定ローラーの感覚で粗っぽく乗降すると、スライド機構により、かなりの振り子動作が発生します。

例えれば、揺れた船に乗降する感じでしょうか。静かに乗降すれば振り子感は抑えられますし、派手に乗降しても、KICKR MOVEのスライドが原因で前後に倒れることはありません。

スライド機構のロックアウトは、乗降車後にシューズで解除できる位置にありますので、乗降時に固定するのも一つの方法かもしれません。ただし、結局慣れてしまえば、従来の固定ローラーのように、スムーズに乗降できるようになります。

◎ フレーム負担の軽減

従来の固定ローラーのKIKCR導入時[2]には、ダンシング時などは特に固定されている感が強く、フレームに負担の懸念がありました。ただし、今回のKICKR MOVEのスライド機構により、フレームへの負担感を感じることがなくなりました。

後輪をする固定ローラーは、体感的にも実走と比べて負荷が集中しやすいため、フレームへの影響を懸念していました。KICKR MOVEのスライド機構により、前後にスライドすることで、後輪の固定感がなくなり、フレームへの負担感も軽減されている感じです。

◎ シッティングの実走感

KICKR MOVEのスライド機構は、自然な感覚の走行感により、疲労が軽減されて全体的な効率性が向上し、よりハードなトレーニングが可能とされています。機構としては、振り子的な動きではあるのですが、実際にシッティングの踏み込みでみると、上死点からの踏み込み時の固定感がなくなり、実走と同じように円運動で均等な力配分で、自然な感覚でペダルを回すことができます。

シッティング時のスライド移動範囲は、前後に1cmといったところでしょうか。従来のKICKRは強い固定感からの違和感[2]がありましたが、固定感から解放され、実走に近いペダリングが可能となります。ただし、過度な固定感はなくなる反面、従来の固定式ローラーと比較すると、踏み込みの力が逃げている感覚はあります。

踏み込みによりスライドが動作しているので、悪く言えば踏み込み力が機構的には逃げているのですが、振り子の動作により、踏み込みの力がある程度還元され、パワーロスを最低限にしている感じでしょうか。いずれにしろ、機構的にパワーロスがあるにしろ、実走と同じペダリングができる点は、非常に大きなメリットと言えるでしょう。

◎ 長時間シッティングの疲労軽減

また、KICKR MOVEのスライド機構は、自然な感覚の走行感による疲労が軽減により、より長時間のハードなトレーニングが可能とされています。おそらくスライド機構には、実走と同じような効果があるもでしょう。以前の固定ローラーでは、1時間ほど発生していたサドルの圧迫感が、確実に軽減されています。

実走と同じく、スライド機構による前後動作による動きが、シッティング位置や圧力を微妙に変化させているのでしょう。スライド機構により、サドルの圧迫感が軽減され、長時間の室内ライドの苦手感が軽減されました。

△ ダンシングの挙動

ただし、スライド機構でのダンシングは、実走とは異なるテクニックと慣れが必要です。ダンシングによる体重移動でも、スライド機構が動作しますので、荒っぽくダンシングすると、スライド機構による激しい振り子の動作が、危険なほどに発生してしまいます。

いわゆる、置きに行くような「休むダンシング」のように、少ない体重移動を意識すれば、実走と同じようなダンシングが可能で、実走との違和感も少なめです。ただし、激しく踏み込むスプリントのようなダンシングには不向きで、スライド動作を意識した、実走とは異なるスプリントテクニックが必要とされます。

スライドスイッチの位置は、ペダルを外せば、シューズで操作できる位置にありますので、スプリント区間前の下り区間などで、スライド機構をオフにしておくことが可能です。とは言え、実走の感覚で激しく踏み込むことは難しいので、Zwiftでレースに参加する際には、あらかじめスライド機構をオフにしておくのが現実的だと思います。

△ WIFI対応 - 2.4GHz帯のみ、12〜14チャネルは未対応

結論的には、KICKR専用に2.4GHz帯のWIFIルーターを設定して増設するか、WIFIは利用せずに有線オプションのDirect Connecの導入が簡便かもしれません。

KICKR V6から搭載されたWIFI機能[7]ですが、MOVEでも改善はされていないようです。全世界向けの帯域での出荷[8]であり、日本での初期設定や安定稼働には、WIFTルーター自体の設定変更は不可避でしょう。

× バンドステアリング環境に対応できず

初期セットアップ時に気がついたのですが、KICKRに自宅のアクセスポイントが表示されず、自宅のWIFI環境が認識できませんでした。調べてみたところ、KICKRのWIFIは「2.4 GHz Wi-Fi 接続 (802.11b/g/n、20 および 40 MHz チャネル幅、チャネル 1 ~ 11) 」に固定[9]されているとのことでした。

5GHz帯はもとより、日本で利用が許可されている12〜14チャネルには未対応な状態で出荷されています。5GHz帯対応はともかく、日本での2.4GHz帯の12〜14チャネル[8]に未対応であるのは致命的で、日本で出荷されているWIFIルーターとの接続トラブルは不可避でしょう。

自宅のWIFI環境においても、バンドステアリング機能が有効となっており、混雑に応じて2.4GHz帯の5GHz帯の切り替え、チャンネルの選択が行われます。2.4GHz帯の場合にも13チャンネルが選択されていたりで、KICKRのWIFIからは認識されない状況が多発していました。

◎ Direct Connecでの接続

とは言え、自宅のバンドステアリング機能を無効にして、KICKRのために2.4GHz帯に固定しチャンネル幅を調整する選択肢はとりたくありません。結局は、KICKRのWIFIは設定せず、従来通り[2][3]Direct Connectの有線環境で接続することにしました。

今回は、日本代理店で購入したものの、5GHz帯対応はともかく、KICKRの無線設定が日本向けに最適化されていない[8][9]のは残念なところです。現状は、KICKR側でのWIFI設定は考慮されていませんが、今後の改善に期待するところです。

◎ KICKR CLUMBへの対応

前後移動するKICKR MOVEの発売に合わせて、KICKR CLIMB向けのアダプターも準備されています。KICKR CLIMBの動作を、KICKR MOVEの動きに合わせて、より弧を描くように設計されています。

KICKR CLIMBは、MOVEのスライド機能へ追従することにより、かなりダイナミックに弧を描く動きになります。通常のKICKR CLIMBの稼働範囲を超えてしますので、転倒防止の安全面から、MOVEと併用する際にベースアダプターはは必須のオプションとなります。

KICKR CLIMBは、昇降の動きだけでも、床面のマットの摩耗があります。ベースアダプターはゴムの厚みもあり、床面保護の観点からも、おすすめのオプションです。

○ 積算走行距離計の搭載

故障してしまったKICKR 2020[1]ですが、KICKR V6から搭載された走行距離計[7]は、MOVEでも踏襲されています。「700 x 28c」の円周に固定されており、感覚的にはZWiftの距離計との乖離に違和感はありますが、KICKRホイールの回転数を一律に積算するには合理的な対応でしょう。

KICKR MOVEについても、初期不良のみ、保証期間1年のサポートであり、走行距離での補償はありません。ユーザーとしても、普段から意識すべき値ではありませんが、ユーザ側では中古で購入する目安として、サポートセンター側では故障の参考となる数値として活用できそうです。

最後に

KICKR MOVEは、従来の固定ローラーにはない、前後スライド機構を搭載したトレーナーです。前後スライド機構により、固定ローラー特有の違和感なく、自然なペダリングが可能になります。また、スライド機構により、後輪への固定力が分散され、フレームへの負担が軽減されます。これにより、長時間トレーニングの疲労が軽減されます。

ただし、ダンシングでの挙動は特有で、実走とは異なるテクニックと慣れが必要です。スライド機構は、ロックアウト機構があり、バイクを装着時やトレーナーの移動時はもちろん、スライド機構をオフにし従来のKICKRのような固定ローラとして利用する機構としても活用できる点も、保険的な意味で有難い機能です。

また、WIFI対応が限定的で、2.4GHz帯のみで利用帯域も最適されておらず、5GHz帯を併用するようなバンドステアリング環境には未対応なため、初期設定が煩雑で、安定的な運用のためには、ルーターの設定変更は不可避なため、今後の改善が期待されます。